イントロダクションストーリーストーリー

本歌取りだ、と思った。
元の歌の一部を受け継ぎながら、さらに展開を加える和歌の技法である。
『とりつくしま』という原作の卓抜なアイデアを活用しつつ、
映像には新しいリアルと味わいが息づいていた。
死を扱いながらも、温かくユーモアのある世界。
とりつく側の視点をこんなふうに描くのかという驚きとともに、
残された側にも踏みこんでいるところが魅力だった。
見送ったばかりの父を思うとき、笑顔になれたことにも感謝している。
たぶん私ではなく、母の何かにとりついていることだろう。

俵万智(歌人)

 

世界はこんなにも切なくて温かい。
私たちが住んでいるのはこういう世界なのだから、明日も生きられる。
死んでも生きられる、と思いました。
そして、親が原作、子が監督という、夢のような映画があるもんなんだなあ、と驚きました。
この映画が生まれて良かった。
ここは素敵な世界です。

山崎ナオコーラ(作家)

   

なんとまあ、優しい映画であることよ。
いくつもの感心してしまうディテイルがあるのだが、
その中でも最も優れているのは小泉今日子の起用であります。
この役は彼女以外にはあり得ない。
東かほり監督の慧眼、周到さに感服しました。

山内ケンジ(劇作家・映画監督)

 

現世に未練があるから「とどまる」だろう、間違いなく「居残る」だろうと今なら思える。
愛しい人を見守りたいからそばに居たい。
そんな純愛を愛おしいくらい可愛らしく具現化して、モノへの愛着は人への愛情なんだと伝えてくれる。
なんて、多幸感に満ちた死生観の映画なのだろう。
大好きだ。

伊藤さとり(映画パーソナリティ・映画評論家)

 

言葉をかけられなくても、返事を受けとれなくても、
約束ができなくても、もう「またね」って言えなくても、誰かは誰かを思っている。
どこかから聴こえてくるハナウタのような柔らかさで紡がれた物語。
抱きしめて、抱きしめられてた。

シブヤメグミ("浮かぶ"二代目店主)

 

人間は死後の世界に関与できない、という当たり前のことを映画を観ながら感じて、
すこし悲しくなり、すこしほっとした。
それは、この映画が、こころの奥底で「私」という存在を支える
「たましい」とも呼んでもいいなにか大切なものが、
この世の中に静かに満ちていることを、
映像と音声で見事に表現しきっているからだと思う。

大墻敦(映画監督)

小さいころに、よく星を見上げながらこう思ってた。
「自分が消えてしまったら...お星様になって、大切なみんなを見守ってたい」って。
でも『とりつくしま』だったら、もっともっと近くにいられる。
人を想う、この世で一番温和で尊いお話。

小川あん(俳優)

いつもの生活の愛おしい瞬きを映し出す東さんの空気が好きです。
俳優は肩の荷を下ろして、その人らしい姿で存在する。
今作は永遠なんてない世界で、大切な人と一緒に居させてくれた。
お守りのような映画だなあ。

辻凪子(俳優)

大切な誰かを失った時、どうしたって悲しみや寂しさや、悔いが、残る。
そんな気持ちで俯いていた私の背中に、両手をそっとあててくれる映画でした。
今、目の前にある奇跡を、噛みしめて、抱きしめて生きていくことを、肯定された気がしました。
また誰かを失ったり、愛する誰かを置いて自分が消えてしまう未来があるとしても、
どんなとりつくしまがあるのか、を思い描いて生きていきます。
そしてそんな時は「いしやきいも」も思い出すと思います。

田川恵美子(俳優)

死んでしまったものから、いま生きているものたちへ。
親から、子へ。小説から、映画へ。
失われてしまったものたちが形を変えながらとりついて、この映画ができているということ、
俳優たちひとりひとりの存在が、眩しくて愛おしいものでした。

小林エリカ(作家・アーティスト)

週末の夕方にぼんやり見て、幸せを感じて、明日も生きていこうと思えます。

佐藤尚之(コミュニケーションディレクター)

舞台のような映画でした。
モノになっても想いを残し続けたい、そんな声が聞こえる物語をありがとうございます。
小泉今日子さん、素敵です。

蓮舫

東かほり監督が脚本を送ってきてくれました。
声の出演をとのことで。
脚本を読んで悲しい涙ではない、暖かい涙を堪えてぜひ声を録音しようと思いました。
大事な家族、大切な友人、会ったことのない憧れの方々、
いなくなってしまった人たちとはもう会えないんだなと思ってました。
でも、その人たちのことを思い浮かべれば会えたんだ、
目の前のモノを見つめればきっとそこに居ると思う、
そんな気持ちになる素敵な映画です。
昨日生きてしまったら今日が来て、今日を生きたら明日が来る。
大事な、大切な、憧れたみんなと一緒に。
そして、とりつくなら音に。

鈴木慶一(ミュージシャン/moonriders)

 

東直子さんの傑作小説を、娘のかほりさんが映画化し、
小泉今日子さんが「とりつくしま係」を演じるという奇跡のような作品。
死を扱った物語なのに、湿っぽさがなくて、諦観の横に温かさがあって、
あれっ? と思うような展開もあって。
孫にプレゼントしたカメラの「レンズ」にとりついたおばあさんの数奇な運命がとくに好き。
ああ、いいなあ、もっと観ていたいなあ、と思った。

中島京子(小説家)

親が子を見守るように優しい。その優しさに少し反抗したくなる。
ふと、孤独に気づかされる。そのシーンの俳優がとても良い。
気づいたら寄り添っていた。優しい気持ちのまま映画を観終えた。
反抗しようとした自分が恥ずかしい。
優しくて良いじゃないか。よかった今日もまだ優しいままだ。

金子岳憲(俳優)

こんなの切ないに決まってる!
喪失であり、余白を描くことこそが映画だと思ってます。
「あおいの」と「ロージン」にやられました。

市井昌秀(映画監督)

 

その絶妙な距離感。まるで、私たちが私たちを眺めているようだ。
ふわりとした空気感でありながら、人生の辛辣さや人間のおかしみが混在していて、
なんとも言えない気持ちになった。
そして、観てから数週間たっても心に住み着いて、日常のふとした瞬間に思い出している。
ああ、そうだった。これが「とりつくしま」の魅力であった。
親子の親和性によるものだろうか。東かほり監督が撮られたことの意味を感じる。
そっと大切にしたくなる映画。本当にうれしい。

眞鍋卓嗣(劇団俳優座 演出家/舞台作品「とりつくしま」演出)

この目で見えなくてもそこに在る、生と死とやさしさの距離。
東さんの映画は、わたしたちの日常の輪郭の層をひとつ広げてくれる。
こんな眼差しに溢れた世界なら独りぼっちなんてこと、決してないかもしれない。

根矢涼香(俳優)

主人公たちの「たましい」と共に「とりつくしま」から世界を眺めながら、
私の少し疲れてコチコチに固まった「たましい」はフニャフニャに素直になっていた。
映画館の外に出るととても幸せな気持ちが溢れてきて、
目に入る景色がまるで違って見えた。
誰かを大切に思っているあなたに観て欲しい。

佐藤みゆき(俳優)